有線と無線の伝送方法

     

概要


ここでは、ネットワーク通信における有線と無線のデータ伝送の仕組みについて説明する。
産業用ネットワークにおいても、有線と無線は数多く利用されており、これらのデータ伝送の仕組みを理解することで、効率的なネットワークの構築に活かすことができる。

また、ネットワークを介する外部からのサイバー攻撃も、ここで説明するデータ伝送の仕組みに則って行われており、効果的なネットワークセキュリティ対策を考える上でも理解おいて損はないだろう。

       

有線と無線の伝送方法について


ネットワークの通信方式には、有線と無線の2通りが存在する。

有線は、伝送路として銅線を利用したメタルケーブルや光ファイバなどを利用し、電気や光を使用して通信する。
無線は、国で割り当てられた電波を使用して通信する(*1)。

これらは、コスト、データ容量、伝送速度、および伝送距離等を考慮し、使い分けられている。

有線と無線の主な伝送路は、下記の通りである。
     

種類 伝送路
有線 メタルケーブル(同軸ケーブル、ツイストペアケーブル、フラットケーブル、多芯ケーブル)
光ファイバ
無線 3kHz~3THz の電波

     

データ伝送の基本原理


データ(アナログ/デジタル)を伝送する媒介として、主に電気信号と電磁波が存在する。
電気信号の身近な例としては、我々が日常で使用している電力に使用されている(強電ともいう)。電力を伝送する場合、決められた電圧(以降、振幅という)、周波数、位相でメタルケーブルを通って伝送されている(日本では、100V~50万V の電圧を 50/60Hz の交流で伝送している)。

電気信号を電力として伝送する場合の電気信号の波形の概略図は次の通りである。
     

     
では、電力ではなくデータとして電気信号を利用する場合(弱電ともいう)、電力と同じように決められた振幅、周波数、位相で伝送しただけでは、電気信号の値は何も変化しないため、その電気信号を受信しても何のデータが伝送されたのかは分からない(直流の場合も同様)。

そこで、振幅、周波数、位相を伝送したいデータに合わせて変化させ(変調という)、受信したときに何のデータが伝送されたか分かるようにしたものが、電気信号による基本的なデータ伝送である(もちろん、電力のように大きな電圧ではない)。

電気信号をデータとして伝送する場合の電気信号の波形の概略図は次の通りである。
     

     
また、電気信号のオンオフをデジタルデータの 1 と 0 に対応させ、データを伝送する方法もある(断続的な矩形波となるが周期はある。厳密には綺麗な矩形波にはならないが)
オンオフの電気信号をデータとして伝送する場合の電気信号の波形の概略図は次の通りである。
     

     
電磁波の場合、主に電波と光(主に赤外線)を媒介としている。
電波や光は、電気信号と同じように波の性質をもっており(詳細は量子論などから学んでいただきたい)、振幅、周波数、位相を変化させることで、データを伝送する。

電波や光においても、オンオフをデジタルデータの 1 と 0 に対応させ、データ伝送する方法もある(光での伝送は、こちらの方法の方が実用化されており、光の高い周波数を活かす伝送の研究は現在も盛んに続けられている *2)。

電磁波の周波数の一覧は、文献 *3 を参照されたい。

     

データ伝送の速度


続いて、データ伝送の速度について説明する。

データ伝送の速度は、単位時間あたりにデータをどれだけ送れるかという単位である(つまり、単位時間あたりのデータ量である)。この速度は、周波数と帯域幅(周波数帯域や帯域ともいう)に大きく左右される。媒介(伝送路)を伝達する電気信号や電磁波そのものの速度ではないことに注意していただきたい。

周波数は、Hz(ヘルツ)という単位で値が決められており、1秒間あたりの周波数(振動数)を表している。
デジタルデータを電気信号や電磁波のオンオフに対応させるデータ伝送(上図参照)では、周波数が高いほど、単位時間あたりにより多くのデータが送信できる(オンオフの回数が増加するため。周波数による速度を帯域幅と呼ぶこともある -> 分かりずらい要因のひとつ)。

一方、振幅、周波数、位相を変化させる伝送方法の場合、周波数の高さよりも帯域幅により、データ容量が大きく左右される。
帯域幅とは、データ伝送時に利用できる周波数帯の幅のことである。
例えば、文献*4 を参考に、無線LAN で使用される 2.4 GHz 帯(IEEE802.11b と IEEE802.11g)の場合、1つのチャンネルで、22 MHz (1ch:2401~2423)の帯域が確保されており、理論値では 11Mbps/22Mbps ※1 の最大通信速度となっている。

※1 bps とは、1秒間に送付できるビット数のことである。
オンオフでの伝送方式の場合、周波数の値が bps(bit per second)となる。
変調方式の場合、帯域幅の値が bps となる。

     
<Tips 1>
電気信号と電磁波は伝送媒介や伝送原理は異なるが、真空中におけるそのものの速度は、光速(約30万km/s)である。電気信号は電場の変化(電場変位)に伴う電子の伝達であり、電磁波は電子の動きによって発生する電場変位と磁場変位の伝達である。よって、電気信号と電磁波はどちらも電場変位の伝達速度(光速)となる(詳細は、電磁気学や量子論などの文献を参考にしていただきたい )。

          
<Tips 2>
コンピュータにおいて周波数という用語は、CPU の「クロック周波数」にも使用されている。
クロック周波数は、CPU 内の水晶振動子(最近ではシリコンで作成されているケースも多い)で発振されている矩形波であり、CPU で処理する命令の同調を取るために使用されている(ベースクロックも同様の役割である)*5, *6

     

データ伝送の仕組み


ここで紹介するデータ伝送は、有線/無線のどちらでも共通で利用されている伝送方法である(※ブロードバンド方式は特性上、無線で使用されることはほとんどない)。
データには、アナログデータ(連続的な値)とデジタルデータ(離散的な値)の2つが存在する。

アナログデータの伝送では、「変調」という技術が使用される。
変調とは、決まった周波数の搬送波信号(伝送路を伝送しやすい周波数の信号:周波数が高いものが多い)と伝送したい信号を変調(信号を組み合わせること:被変調波信号にする)することで、データ伝送している。
アナログデータを受信する際は、被変調波信号から伝送したい信号を取り出し、目的のアナログデータを受信する(復調という)。
アナログデータの変調には、主に下記の表の種類が存在する。
      

種類 概要
AM
(Amplitude Modulation)
伝送したいアナログデータの信号の強さにより、搬送波の振幅を増減させる方式。
FM
(Frequency Modulation)
伝送したいアナログデータの信号の強さにより、搬送波の周波数を増減させる方式。
PM
(Phase Modulation)
伝送したいアナログデータの信号の強さにより、搬送波の位相を変化させる方式。
PCM
(Pulse Code Modulation)
伝送したいアナログデータの値を一定時間間隔でビット列に変換し、デジタルデータとして変換する方式。

      
変調についての技術的な詳細は、文献*7*8 などを参照されたい。

デジタルデータ伝送では、ベースバンド方式とブロードバンド方式(変調方式)という技術が使用される。
ベースバンド方式は、伝送したいデジタルデータをそのままパルス信号に変換して、データを伝送する。
パルス信号には、複数の方式(単流NRZ、単流RZ、複流NRZ、複流RZ、差分、バイポーラ、ダイパルス、ダイコードなど)が存在する*8。近距離通信に向いており、イーサネット通信、シリアル通信、コンピュータの内部バスなどで使用されている。無線での通信には向かない。

ベースバンド方式では、周波数高くすると、パルス波形が減衰する/周波数帯域を占有するという問題が生じるため、長い伝送路には向かない。そこで、ブロードバンド方式は、アナログデータの伝送と同様に、変調を用いて伝送する方式であり、長距離伝送も可能となる。
ブロードバンド方式には、主に下記の変調方式が存在する。
      

種類 概要
ASK
(Amplitude Shift Keying)
伝送したいデジタルデータの 1 の区間では搬送波を送り、0 の区間では何も送らない方式。
FSK
(Frequency Shift Keying)
伝送したいデジタルデータの 1 と 0 に異なる周波数の搬送波を割り当てる方式。
PSK
(Phase Shift Keying)
伝送したいデジタルデータの 1 と 0 に異なる位相の搬送波を割り当てる方式。

      
実際のアナログデータおよびデジタルデータの伝送には、上記の方式を組み合わせたり、多重化という技術を用いたりして、高速・高品質でデータ伝送している。

      

おわりに


本記事では、有線と無線におけるデータ伝送の仕組みについて解説した。これらのデータ伝送の技術は現在もなお、高速化のために研究が続けられている。無線では 5G が 2020 年に本格運用を開始する予定とされている。

このような高速通信に対応する IoT 機器等も多く登場すると予測でき、制御システムにも多く導入されることになるだろう。

同時に、サイバー攻撃を行う攻撃者にとっては、以前よりも攻撃しやすい環境となってきており、制御システムの担当者はセキュリティ対策についても十分に考慮する必要が出てくるだろう。

      

参考文献


[1] 周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴, https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/summary/
[2] 超大容量1テラビット/秒光信号の長距離伝送に成功, https://www.ntt.co.jp/news2019/1906/190619a.html
[3] 電磁波の波長と名称, http://www.hp.phys.titech.ac.jp/yatsu/1FGL2339/img/elemag_waves.pdf
[4] 無線LANのチャンネルの割り当て方, http://musenlan.biz/blog/522/
[5] クロック周波数とは何か?パソコン初心者向けにわかりやすく解説!, https://yoshi-seventh.com/archives/1496
[6] CPU・MPUはどうやって動く? ~ 発振器のナゾ, https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/0611/28/news110.html
[7] 6.3.変調, http://www.miyazaki-gijutsu.com/series3/denso063.html
[8] 第2章データ伝送方式, http://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/lecture/network/network02/index02.htm

       

登録日時2019-08-29 20:08:50 +0900
更新日時2019-09-29 19:52:39 +0900