産業用ネットワーク入門

     

概要


産業用ネットワークとは、プラントや工場の制御システムで使用されるネットワークのことである。

従来は、制御ネットワークのみで構成されている形態が多く、別の社内ネットワークと接続する機会は少なかったが、現在は、業務効率化や生産性向上のために、制御ネットワークと情報ネットワークが接続され、相互にデータをやり取りしている構成が多くみられる。

また、生成する製品等の生産データだけでなく、各制御システムの装置や機器の稼働データなどを制御ネットワークを通じて収集し、機械学習を利用した異常/故障検知等に利用したり、遠隔地から制御システムを操作・監視したりといったニーズもあることから、インターネットや外部ネットワークと接続する形態も増加している。

一方で、インターネットや外部ネットワークと接続することを前提に設計・構築されていない制御ネットワークは、セキュリティ対策が後回しになっており、産業用ネットワークへのセキュリティ対策の整備が急がれている現状もある。

本シリーズでは、これらの産業用ネットワークの入門編として、産業用ネットワークの構成、歴史、特徴、構成機器、セキュリティ、制御システムプロトコルなどについて説明していく。
※随時、更新していく予定です。

     

産業用ネットワークの概略図


産業用ネットワークの概略図は主に次の通りである。
     

     
多くの産業用ネットワークでは、情報ネットワークと制御ネットワークに分離されており、2つのネットワークは、FW 等で通信を制限しているケースが多い。
各ネットワークとレベルの役割は、次の通りである。
     

ネットワーク種別 概要 
情報ネットワーク 企業における OAPC や各種サーバなど、情報システムが稼働するネットワークのことを指す。
最近では、制御ネットワークからの情報をインターネット経由でクラウドに送信し、データ分析等を行うことも多い。
制御ネットワーク 制御システムを構成するネットワークのことを指す。コントローラレベル、フィールドデバイスレベル、
センサレベルに大きく分けることができる。
コントローラレベル DCS や SCADA 等の制御システム全体をコントロールするシステムが設置されているネットワークのことを指す。
各種装置のログなどの収集を行ったり、リモート保守用PC からベンダがアクセスしたりするのも、このレベルで
あることが多い。
フィールドデバイスレベル DCS や SCADA 等から指示を受け取り、センサレベルの装置へ指示を出す装置(PLC 等)が設置されている
ネットワークのことを指す。SIS(Safety Instrument System)等もこのレベルに設置されていることが多く、
センサレベルからの異常値を受信した場合、早期に安全に制御システムを停止させることができる。
センサレベル 制御システムを構成するセンサ類などが設置されているネットワークのことを指す。
最近では、無線経由でデータをやり取りすることも多い。

       
現在は、コントローラ、リモートI/O、センサ自体の高性能化により、制御ネットワークの各レベルの分離は曖昧になってきている。

特に、コントローラ自体に Web サーバ相当の機能や高水準言語でプログラミングできるといった、通常の PC 相当の処理ができるようにもなっており、コントローラ自身でセンサ等のデータを収集・分析して適切な処理を実施する等、従来は DCS や SCADA で行っていたような処理を行えるデバイスも多くなっている。

      

産業用ネットワークプロトコル


ここでは、世の中ではどのような産業用ネットワークプロトコル(制御システムプロトコルや制御ネットワークプロトコルとも言われる)が使われているか紹介する。

下図は、HMS社が毎年公表している産業オートメーション市場において、新規設置されたノード数(産業用ネットワークに接続された機械あるいはデバイスを 1 ノードとしている)に基づき推計した産業用ネットワークプロトコルの市場シェア(参考文献参照)を参考に、2015年~2020年までの推移結果をまとめている。
      

上図から見て取れる通り、イーサネット系プロトコルの市場シェアが伸びている。この背景には、高速通信といった高性能に対するニーズ、産業機器・設備と情報システムや IIoT 間のデータ連携や統合といったニーズ等があり、今後もイーサネット系プロトコルの市場シェアは伸長することが予測される。近年、国内の制御システムを保有する企業で導入が進み始めている OPC-UA は、Other Ethernet に含まれると推測される。

ワイヤレス系プロトコルの市場シェアは2017年以降停滞しているものの、敷居コストの低減や新たなスマートかつフレキシブルな制御ソリューションを実現する技術として今後伸びていくことが期待される。高速、低遅延、高信頼性などが期待されている5Gネットワーク技術により、この市場シェアも大きな変化が起こるかもしれない。

      

参考文献

[1] HMS, 産業用ネットワーク市場シェア動向 2019 (HMS 社統計), https://www.hms-networks.com/ja/news-and-insights/2019/05/07/industrial-network-market-shares-2019-according-to-hms
[2] HMS, 産業用ネットワーク市場シェア動向 2018 (HMS 社統計),
https://www.anybus.com/ja/about-us/news/2018/02/16/industrial-ethernet-is-now-bigger-than-fieldbuses
[3] HMS, 産業用ネットワーク市場シェア動向 2017 (HMS 社統計), https://www.hms-networks.com/ja/news-and-insights/2017/02/20/industrial-ethernet-and-wireless-are-growing-fast-industrial-network-market-shares-2017-according-to-hms
[4] HMS, industrial networks – market shares 2016, https://twitter.com/HMSAnybus/status/705035648932192256/photo/1
[5] HMS, industrial networks – market shares 2015, リンク切れ
[6] 産業用ネットワーク市場シェア動向 2020(HMS Networks 統計), https://www.hms-networks.com/ja/news-and-insights/news-from-hms/2020/05/29/industrial-network-market-shares-2020-according-to-hms-networks. , 2020年9月22日閲覧

      

更新情報

2020年4月22日:産業用ネットワークプロトコルを追加
2020年9月22日:2020年の産業用ネットワーク市場シェア動向を追加

        

登録日時2019-08-04 01:19:29
更新日時2020-09-28 02:00:58